9月26日(土)に控えたコンサート「音の道」の開催に向けて、内部広報者に共同主催の代表者2人をインタビューしていただきました。
・・・
2026年9月26日、東京都・西荻窪の勤労福祉会館にて開催されるコンサート「音の道」。
「THE MUSICAL」と題された1部ではミュージカルの名曲の数々を、「天地の声 〜今、日本人に届けたい歌〜」と題された2部では、自然をテーマにした童謡や合唱曲、さらに本公演のために書き下ろされたオリジナル曲の演奏を予定している。
本公演は、元劇団四季の俳優の阿川建一郎さんが代表を務め、2016年の創設以来、オリジナルミュージカルやコンサートなどの公演を年間3〜5本というハイペースで開催してきた「A music company」と、同じく元劇団四季の俳優・森健太郎が代表を務め、舞台やイベントの企画・プロデュース事業を担う「株式会社IWATO」による初の共同主催だ。
「ミュージカルと日本の伝統的な歌。なんだか聞き慣れない組み合わせだけど、一体どんなコンサートなんだろう…」
阿川さんと森さんに、公演までの道のりやそこに込めた思い、稽古の様子、さらに主催者視点でのおすすめやこだわりポイントなどを聞いた。
■「道」を極める人から湧き出るエネルギー

――ミュージカル曲と日本の童謡や合唱曲。一見すると斬新な組み合わせに感じるのですが、企画の裏にはどのような想いがあるのでしょうか?
阿川:聞き慣れない組み合わせですよね(笑)。とはいえ「美味しいアイスに美味しいケチャップかけてみました。両方美味しいし、きっと美味しいよね?」みたいな話では決してなくて、公演全体にしっかりと1つの「道」というコンセプトを据えていて、全ての曲に意味や役割がある構成になっているんです。
例えば、ミュージカル曲では『ライオン・キング』や『アラジン』という多くの人が一度は耳にしたことのある作品の楽曲を取り入れつつ、生命や自然の讃歌をテーマにしています。日本の童謡や合唱曲などは自然への慈しみを主題としたものが多いので、音楽的には別の畑にあるものの、そこに通ずる価値観を丁寧に見つめて選曲しました。
森:全編日本語の曲で構成しているのも特徴です。日本の曲や日本語に重きを置いた理由としては、単純に「日本にはこんなに美しいものがあるよ」と改めて発信したり、その事実を喜び分かち合う機会があったりしたら素敵なのではないか、と考えたことが大きいですね。日本の暮らしや舞台芸術は「八百万の神」という言葉が代表するように、変わりゆく自然の中に神聖なものを見出して発展してきた側面が多く、それがすごく美しいなと思ったんです。
また僕自身が、そうした変わりゆく世界の中で、変わらず何か、本当にどんなジャンルのどんな規模のものでもいいのですが、とにかく没頭してしまうような何かに向き合い、自分の「好き」や「道」を突き詰める人たちの持つ独特なエネルギーが大好きなんです。日本社会の中で「音」に向き合ってきた人たちと、自然や生命を慈しむコンサートにしたいと思っています。
■日本語の「音」は、心を映す言葉

――「道」を極める人が持つ、特有のエネルギーですか。
阿川:実はこの企画を形にするにあたって「エネルギー」は1つの裏キーワードになっているような気もします。森君と一緒にお酒を飲んでいたときに、コロナ禍で演劇業界が軒並み大打撃を喰らって、そんな中でなんとか作品の幕が上がったときの話をしていたんです。今まで当たり前だった舞台に立てなくなり、改めてその尊さや有り難さ、特別さを演者やスタッフ全員が噛み締めていました。カンパニーに参加していた僕自身も、そのエネルギーがひしひし、いや、びりびりと劇場を満たしているのを感じていました。
そこで「同じ作品でも、人の心のありようでこんなにも作品の魅力やパワーは最大化されていくんだ」と心を突き動かされたことを覚えています。もちろん舞台に立つ人は毎回全力でそこに立っているのですが、その公演を観てくださった人たちからは、未だに「あのときの公演は特にすごかった」とお言葉を頂戴するほどのエネルギーがあったんです。僕にとって、人前にあえて立って何かをすることの意味が再定義されるほどの出来事でした。
森:阿川さんが泣きながら、その話を熱く語ってくれたことを今でもよく覚えています。実は2019年頃から何度かお仕事でご一緒させていただいているのですが、今回のコンサートが実際に形になる背景として、とても印象的な出来事でした。
阿川:なんだか恥ずかしいですね(笑)。これは公演のキーパーソンの1人でもあり、終盤で即興演目も披露してくださる一井さんの受け売りなのですが、日本語の「音」は、英語でいう“sound”や“noise”の意味だけではなく「本音」や「弱音」のように、心をそのまま体現する術としての認識があるんですよね。
芸術と精神性のより強固なつながりによって、当時ボロボロの社会の中で多くの人に力を与えることができた。今回の「音の道」という名前は森君が提案してくれたものなのですが、その原体験によって、僕にとっても、精神性からくるエネルギーを意味する「道」はとてもしっくりときている言葉です。
■世代も経歴もジャンルも越境する。ユニークなキャスト陣

――一井さんのお話の流れで、出演者についても教えてください。
阿川:これまでA music companyで公演を行ってきたコンサートやオリジナル作品『夢やしきへようこそ』 などで支えてくださった方を含め、音の道というコンセプトに沿って「特にお客さんに伝わる良い音を出してくださるような方」の一部に、事前にお声がけさせていただきました。
その後のオーディションで集まってくださったシンガーのバックグラウンドや芸歴もさまざまですが、「自分軸の芯や美学があるな」「良い共鳴が生まれて楽しそうだな」と思わせるようなユニークな魅力を持っている点は共通していますね。ポップス、歌謡曲、ゴスペル、声楽…子役から劇団四季の大先輩まで、本当にいろいろな方がいます。また、意見や運営のお手伝いなどをしてくださる主体的な方がとても多くて、運営として特別な思いがあるコンサートなだけに、お一人お一人の「一緒に作ろう」という熱量が心から嬉しいです。
バンドメンバーも心強い二人が脇を固めてくれています。ピアニストの桑原さんは、シンガーの歌い方に耳を澄ませて丁寧に弾かれる繊細なタッチが印象的なのですが、ここぞというときにシンガーと呼応して迫力のある音も鳴らしてくれる、表情豊かな素晴らしい奏者です。
パーカッションの赤羽君は劇団四季の『ライオン・キング』で現在進行形で奏者もしていて、「楽器オタクの道」を極めた人、といったところでしょうか(笑)。とても珍しい民族楽器なども持っていて「どこで買ったの?!」と周囲をあんぐりさせることも珍しくないですね。今回も彼ならではの多様な表現で音を彩っていただけたらと思っています。
森:開演前の会場でお客さんを音の世界へ誘うクラウンを務めてくださるBiriさんとお客さんの出会いも楽しみにしています。舞浜駅で降りた瞬間にディズニーの世界に胸が躍るように、庭園を横目に進んで狭い入り口から茶室に入るように、私は本編までの道のりや世界観も大切な作品の一部だと思っているんです。実は経営している会社の旧名が「ピエロ」だったほど、私はピエロやクラウンが大好きなので、今回の空間演出の実現には個人的にも特別な喜びがあります。ただ聴くのではなく、体験するコンサートとして、いろいろな角度から楽しんでいただけるように練っています。
■美しい音に触れることは、明日を生きる力になる

――この「音の道」を、どんな人に届けたいですか?
阿川:ミュージカルや舞台が好きな方に加えて、日頃そういった場所へ足を運ばれない方々や音楽を詳しくは知らない方々にもぜひお越しいただきたいです。サブスクリプションやSNSで手軽に音楽が聴ける時代ですが、やはり舞台や生歌にしか届けられないエネルギー、感動があると身をもって感じています。ぜひ「ミュージカルってよくわからないな」という方にも、当日お会いしたいです。
また、A music companyの公演を応援してくださっている方々にとっても、いつもの公演とは一味違ったものをお届けできるんじゃないかなと楽しみにしています。僕の個人的なお気に入り作品でもあり、応援してくださっている方々にはきっとお馴染みの『秘密の花園』の楽曲も2曲ご用意していますよ。
森:私も同じく、より多くの人へエネルギーを波及できたら冥利に尽きますね。社会疲れしてしまうようなことも多いご時世ですが、今の日本に、私たちが現在進行形で生きている国に、こんなにも素敵な音楽や言葉、哲学があるんだと知っていただけたら、それは明日をよりよく生きるための元気や、何か新しい「道」を考えるワクワクにつながるかもしれません。
稽古場でも「改めて歌ってみると本当に美しい歌だね」と子どもの頃に歌っていたような童謡の魅力を再発見したり、曲の中で歌われている自然への解釈を共有しあったりしています。老若男女の心にきっと触れる名曲が目白押しなので、誰と来られても一緒に楽しんでいただけると思います。
9月26日、お客様お一人お一人と「音」を通じて生命や自然を愉しみ、慈しみ、愛おしむ時間を心から楽しみにしています。
